0:30AM。列車はニャチャン駅に到着。そこで目が覚めた。フランス人夫婦は荷物を出して、下車の用意をしている。「Have a nice trip！」「nice to meet you」。nice to meet youって、逢ったときに使う言葉だと思っていたが、別れるときにも使うんだ！「あなたに逢えて楽しかったよ」ということなのだろうか。別れを告げた後、また寝入ってしまう。

　5:00AM。ホーチミンシティ＝サイゴンまであと100km以上ある。マングローブの森の中を列車は抜けていく。Hungさんによると、この森を勝手に業者が伐採してしまうので、鉄砲水が起きているということだ。特に雨期が危ない。ベトナムの雨期は、最初は朝方にスコールが降り、それがやがて昼に移り、夕方に移り、夜に移って終わる。今は夕方がスコールの時間帯だそうだ。それは同時に台風のシーズンでもある。

　それからHungさんにベトナムのことをいろいろ教わった。

・日本人は英語教育の問題から、読み書きは得意だが、会話が不自由であるのに対し、ベトナムでは1990年から英会話教育が安価に提供されるようになり、会話力を伸ばしていること。日本は高額になるのが問題ではないかということ。（1990年以前は、ロシア語が一般的だったらしい。）
・現在ではベトナムのファッション、コスメティック、音楽は大体が韓国から輸入されていること。
・ベトナムの米は日本のと異なり、小さいが、それは年に3-4回収穫を行うためであること。だから逆に安価にできるので（2kg 1$）、アフリカ、インドネシア、北朝鮮に輸出しているということ。日本への輸出は難しい、というのも、日本人が品質にこだわるから。
・ベトナムワインはやっぱり米焼酎であること。
・国際電話は郵便局からかけるべきであること。ホテルや他からだと30%割り増しになってしまうこと。
・ラオスでは麻薬の売買は許されているが、ベトナムでは50gの所持で銃殺であること。
・サイゴンの人口は600万人を超えているということ。特に地方の貧しい層が次々に流入し、彼らが夜の商売へと流れる。観光客は狙われ、物も盗まれる。要は夜の商売にはついていかないこと。今日の新聞にもついていった日本のビジネスマンが12万5千円と23$やられたことが載っている（記事を見せてもらった）。
・ベトナム語の習得には発音だけで半年かかり、さらに文法となるとフランス語や中国語の影響があるので複雑を極める。
・サイゴンにはホモが多い。同時にスリの達人でもある。中国人が多いということ。

　Hungさん自身のことも聞いた。

　Hungさんは、ロシアはモスクワの大学に留学していた。そのときの学費はただ。飲食費や住居費まで支給されていたそうである。彼の勤める会社はプラスチック製品製造で、ビニール製品なども作り、伊藤忠商事経由で日本に輸出したり、ロシアへも輸出しているそうだ。ご自宅はタン・ソン・ニャット空港の近くであり、会社の工場はク・チ・トンネルの近くだ。ク・チ・トンネルに行くときは同行するから電話をかけてくれと言い、名刺や携帯電話（エリクソンだった）の電話番号をもらう。

　朝食が出た。インスタントラーメンだ。車掌が汁をやかんに入れて持ってきて、ついでくれる。おなじみの味だ。

　9:30AM。サイゴン駅に入線する。しかし、エアコン寝台車は全くもって快適だった。71$と高いけどね。

　とうとうサイゴンへ着いた〜！Hungさんとわかれの挨拶と是非コンタクトを、という言葉をいただき、プラットフォームから駅の外へ出る。早速、バイタクやシクロの運ちゃんの大群にもみくちゃにされそうになる。が、こっちは送迎付きだから、さっさと通り過ぎてタクシーに乗り込む。

　迎えに来たホテルの人は22歳の若造だが、調子のいいやつだ。「もうかりまっか？」「ぼちぼちでんな」「ベトナムの中田です」とわけのわからんことをいいやがる。英語は達者だ。そういえば、中田に似ていないこともない。日本人からよく言われるといっていた。

　タクシーから外を見ると、まるで初めて都会に来た田舎ものの心境なり。その禍々しいまでの妖しさをたたえたサイゴン。魅惑されるけれども、同時に恐怖心を覚えてしまう。圧倒的なバイクの交通量。ほとんど資本主義先進国のファッション。でありながら、こすっからそうなおっさんたち。サイゴンではおとなしくしてようかな・・・・。

　ホテルの部屋を見せてもらい、16$のところを15$と交渉する。あっさり受けてしまうのを見て、しまったと思う。もう少し、下から交渉すべきだった。

　昼になり、お腹も空いたので、日本人の経営している旅行代理店でサイゴン情報冊子をもらいにいき、ランチもとることにする。

　旅行代理店Ｔ＆Ｔトラベルでは、騙されやすいサイゴンで騙されないための冊子を配っているということだったが、探し当てた店では、今日はもう家に帰ったと言われてしまう。うーん、あんまり情報がない中では今日は出歩けないなあ。危険だもんなあ。これまでのベトナムの旅とは違い、ここは別の国と考えた方がいいらしいので、今日はうかつに出歩かないことにした。と、やっぱりしつこいシクロ兄ちゃんがやってくる！しかも日本語を話す。彼、エスノーは言う。「日本人だまされやすい。歩くのは危険。信用できる僕のシクロに乗りなさい。」おまえが一番怪しいんじゃあ！彼はそれから、ランチをとっている間もつきまとって離れなかった。Ｔ＆Ｔトラベルの日本人経営者の友人であること、信用できる証拠として日本人の日本語の手紙ももっていること、その他もろもろ様々な状況証拠を突きだしてくる。わしは主張する。「今日はとにかく歩く。それから、後日Ｔ＆Ｔトラベルに行ってから、その後であんたと交渉することにする。」しかし、離れてくれない。結局、ホテルに帰るまで、えんえんつきまとってくれた。えーん、やっぱりサイゴンは怖いよお。

　とりあえず、今日は夕食とインターネットカフェにだけ外出して、明日T&Tトラベルに行ってから、今後の行動計画を検討することにした。
　
＜本日の支出＞
　インターネット　22,000VND
　昼食              22,000VND
　夕食　　　　　　3$