物売りさんというか、旅行者相手のビジネスマンはホイアンにもいた。少年たちである。最初の手口はこうだ。「日本人か？」と確認してから、おもむろに日本の小銭を取り出し、「コインでは両替ができない。札をもっていないか？1000円とか」と言う。そして不足する分は、ベトナムドンで支払うという。で、レートを設定してから、ベトナムドンをもってこさせると、少しまだ不足している。「今はこれだけしか、かき集められないのだが、許してもらえないだろうか」と言う。面倒くさくなって「いいよ」って言ってしまうと、向こうの思うつぼである。・・・・向こうの思うつぼに、はまってしまった。

　また、他の少年は、日本のコインを小さいのでいいから、見せてもらえないだろうか？と言う。100円玉などを見せてあげると、記念にくれないかという。ベトナムドンにすれば結構な高額だが、日本人には、たったの100円に感じてしまうという心理的な錯覚を利用した高等テクニックではある。・・・・これにも、はまってしまった。上述の手口とつながっていることは言うまでもない。

　本当にここの少年たちは頭がいい。彼らは、英語だけでなく、むしろフランス語を得意としている。ベトナム語と合わせると、３カ国語を操れることになる。また、日本語も少々話す。だが、やはり日本語が一番難しいと嘆いていた。

　しかし、今日はすっかり飲まされてしまった。事の発端は、自転車をレンタルして、日本人のお墓に参りにいったときに始まっていた。

　日本人のお墓は、ここに２つある。一つは田圃のど真ん中に、一つは民家のそばに。どちらも日本の方角を向いているのが切ない。田圃のど真ん中にある方の墓は、治郎兵衛という人の墓で、1647年に亡くなったらしい。昭和３年に日本人が渡越して、修築工事がなされていた。お墓には戒名が彫ってある。もう一方のお墓は誰とは知れない。が日本人のお墓であることだけは知られており、ここも修築工事がなされている。そこの民家の人があげてくれるのか、線香が絶やさず焚かれているようだった。この地に、日本人は室町後期より300年ほど住んでいたようだ。

　これらのことは道案内の少年達から教えてもらった。迷いやすい道なので、少年達のガイド商売のネタになるようだ。ただ案内するだけでなく、　「日本人の墓。墓人の日本」という誰が教えたのか、ギャグ付きの日本語まで話す。少年達は、直接お金をせびるような無粋な真似は最初の内はせず、「今日は疲れてしまった。ジュースを飲みにいかないか」と誘い、カフェに行く。そして、飲んでから「知り合った記念におごってもらえないか」と切り出す。おごった後は、どこにこれから行くのかと聞き、聞き出すと案内すると言う。ビーチに行くと言うと、是非ご一緒させてくれとくる。

　ビーチに行く間もビジネスに余念がない。前に少年A、後ろに少年B,Cと、扇状の大艦隊を従えて、ビーチに自転車ツアーする間も、「もしミーソン遺跡に行くのなら、知り合いの安いバイタク屋がいるから、それで乗っていってはどうか？」などなどと商売し始める。ビーチに着いてからも、知り合いのビーチチェア屋につれていき、料理を頼ませる。頼ませるといっても、強要するわけではなく、そんな雰囲気にもっていくだけのことである。また、最後には「家が貧乏で、親が病気だ。助けてもらえないだろうか」というお涙頂戴攻撃で、援助を申請されてしまう。

　このように少年達を従えて、ビーチをうろうろしている時に、ござに陣取っていた酔っぱらい軍団に捕まってしまった。

　「こっちへこい、お兄さん」と半ば強引に座らされ、最初はおきまりの「何歳だ」「結婚しているのか」「ベトナムにはどのくらいいて、どこから来て、どこへ行くのか」などなどの質問攻撃。それから「中田は知っているぞ、名波もな」などが入り、その間に「飲め飲め」が始まる。どうもここで確認したところでは、ベトナムの流儀は次のとおりだ。まず、その場にいるベトナム人一人一人から酒をついでもらい、それを飲むと相手もお返しに飲む。だから、そこに多人数がいると大変なことになるのね。で、今日は大変なことになってしまった。６人くらいもいたのだ。毎回「飲めないんだけど」と言ってもお構いなし。「これがベトナムの流儀なんじゃあ」と無理矢理飲まされる。それから、相手に一人一本づつのたばこを分け与え、みんなで吸う。これで儀式は完了。それが済むと、本当にうち解けあい、「わしらは国はちがえど、肌の色はいっしょじゃけんのお」と「same、same」で盛り上がる。でも、冷静なベトナム男性約１名というものがなぜかいて、「でも、物価は違うよね」などと言って、場をしらけさせる。彼らからは、特に何も要求されず、歓待を受けるばかりであった。

　すっかり、少年達のかもにされた一日ではあったが、酔っぱらい軍団だけは純粋に親善を深めるのみだった。酔っぱらい万歳！

　でも、ホテルに戻って、一人吐いてしまった。つらい・・・・

　写真について。本来は今日見に行った日本人のお墓の写真を載せるべきかとは思ったのですが、このページをごらんいただいている方から、「ベトナムの民と同化した自分の写真をアップしてほしい」という強硬なご意見を頂きましたので、今回はとびきり同化した写真を掲載しております。
　
＜本日の支出＞
　インターネット　30,000VND
　お布施           2,000VND
　昼食            　19,000VND
　少年達への飲み物おごり代      68,000VND
　少年達への料理おごり代        200,000VND　※これには少年たち自身も驚いていた。せいぜい50,000VNDくらいだと思っていたようである。
　少年達への援助費                50,000VND
　ミネラルウォーター＋たばこ　　20,000VND