ベトナム縦断日記
 

1999年7月7日−信じるべきか、信ぜざるべきか(ハノイ)


今日の1枚
 Ngyuen Anh Tuan。25歳。(Anh Sinh ホテル前にて)



 
  うーん、ハノイの朝は早いっす。5時くらいから通りで掃除の音がし始め、6時になるとここはもう80%の動きがある。旧市街にあたり、市場になっているからであろう。7時前にはもう、パワー全開の状態。常に叫び声とバイクのクラクションの音が鳴り響く。7:30頃になると、音楽が鳴り始め、朝の街頭放送が始まる。何を言っているかは分からないが、眠らせてくれないことだけは確かだ。朝食をとるために外出してみると、通りでおばちゃんがこっちゃこいと手を振る。言ってみると「Bia Hoi」の店。朝からビールを飲ませようとするなよお。どっちにしろ、飲めないので、「シンローイ」と謝りつつ、去る。とりあえず昨日とは違う店でフォーガーを食べた。ここもおいしい。「シンチャオ」と「カムオン」と「ンゴン」が一通り通じたようなので嬉しい。

 8:30にもなるともうかなり蒸し暑い。道路から熱気がせり上がって来る感じ。しかし、街並みはなぜか安心できる、とろけるような雰囲気だ。

 今日は早速中央郵便局へ行って、郵送というものを行わなくてはいけない。そういう依頼事項が日本であったので、遂行すべく、ホテルの奥さんに方向を聞いて歩いていく。ホアンキエム湖のそばの通りを4−5分歩いたところにそれらしいのがあった。しかし「International Postal Service」とある。うーむ、Domesticなのはどこにあるんじゃあ。きっとベトナム語でしか書いてなかったんだろうなあ。と、一人きょろきょろしていると、やっぱり来ました。物売りさん。しかも大人と子供のワンセットで、絵はがきと書物と地図をもっている。別に彼らから買う気はないのだが、場所だけ聞こうと思い、「Where is domestic post office?」と聞くと、ついてきなと言う。まだまだここまでなら買う義理はないよな。しかし、たどりついた郵便局で受け付けに英語で話しかけても全く通じない。がーん。どうしよう。そこで、絵はがき売りさんは通訳をかってでてくれました。世話になりますのう。最初に書いていた住所がいまはもうないなどのトラブルはあったものの、代替となる住所に送ることで一件落着(と、勝手に決めてしまった)。しかし、この絵はがき売りさんには世話になってしまった。買わねばなりますまい。と思っていたら、絵はがきを出して、「gift for you」と言う。むう、ただほど高いものはないっすよねえ。ということでぼったくられているのを覚悟で子供の方が言っていた50,000VND支払う。子供の方は、しきりと僕の字を見ながら、まねしてかこうとしては、大人の方に怒られている。

 さあ、用事は済んだ。こっからどうしようかなと思っていると、先ほどの絵はがき売りさんがカフェにいかないかというので、のこのこついていく。子供の方にはバイバイしたのだが、納得いかないのか、しきりに俺のも買え買えとつきまとう。いらんよお、と言いながら、カフェに入ろうとすると、「僕はここからは入れないから、買ってよお」と切なく攻撃してくる。仕方がない。買ってあげた。50,000VND。表情は一変し、晴れやかな笑顔と軽い足取りで去っていく。カフェ屋の店員は、悪い奴だなあという表情で笑っている。やっぱりぼられているのね。僕。

 カフェで、絵はがき売りさん、Nguyen Anh Tuan 25歳とお話をする。彼に早速、50,000VNDは高すぎるのか?と聞いたら、あっさりとそうだと言う。だから、giftだと言ったのに、君が払おうとするからこうなっちゃったんだぞ、と言われてしまう。なぜ、払おうとしたのか僕には理解できないとまで言われてしまった。正直言うと、疑っているからである。不信感がただほど高いものはないと僕に知らせているからだ。しかし、それを言うことはできない。仕方なく、日本人は理由のない贈り物は受け取らないんだとだけ言った。ここで彼を信用するべきか信用せざるべきかは本当に難しい。だが、もう少しつきあってみて、様子を見よう。彼は友達になって、ハノイ近辺を案内したいと言う。昨日の日本人の忠告など、もうきれいに忘れてしまった。

 Tuanは、2年前まで工場に勤めていたが、事故で左手に障害をもってしまった。それからは、夜間学校に通い、英語とコンピュータを勉強しているということだ。Very very poorだと嘆いていた。ハノイでベトナム語を勉強している日本人女性とも知り合いだと、プリクラ写真まで見せてもらった。一人だけうつっているやつだけど。AKIKOと言うんだ、という。また、僕に日本に戻ったら手紙がほしいと住所を教えてくれる。手紙の件は約束した。日本とベトナムのことをあれこれと話しつつ、たばこやカフェをおごった。また、日本で買った本に書いてあった話で、「バオニューティエン(いくら)」と「バオニュートォイ(何歳)」とを間違って、ベトナム女性に言った日本人男性の話をすると、大笑いとなって盛り上がった。いいのかなあ、こんなんで盛り上がって。でも、笑い話まで出来るのは楽しい。彼は、ハノイ近辺ではサ・パという少数民族地域の村を勧めてきて、一緒に行くと言ったが、僕はバッチャンという陶器の村に行きたいと言った。それは明日の予定だが。では、これからハノイ市内を案内するというので、案内料のことが心配だが、まあ面白そうなので乗った。信用するべきか信用せざるべきか分からない時は、面白そうな方に傾いてしまう。

 カフェを出て、まず僕は国際電話をかけたいと言い、つれていってもらった。実家への電話を済ませ(1分50,000VNDほどかかった)、彼の家へ寄ることになる。なぜかというと服が汚いので、恥ずかしく、着替えたいかららしい。やばいかなあと思いつつも、彼の自転車に乗って、お宅訪問。かなり狭く観光客は寄りつきそうもない通りを経て行くと、三階建てくらいの住居(アパート)の中に何世帯も住んでいるようなところだった。一階は土間になっており、台所と食卓兼用でみんながそこで食べている。狭い階段を上がって、彼の部屋は3階にある。4畳半くらいの部屋だ。床にござを敷いて寝るようだ。家賃は1日あたりで70,000VND。高いと嘆いていた。それでも月に8000円くらいかな。部屋では彼が着替えている間に、勉強しているというWindows3.1の教本(ベトナム語)を見せてもらう。画面は英語版のものを使っているようだ。アパートの住人の兄ちゃんたちはお昼寝タイムが始まるらしく、ござを敷いて眠ろうとしている。好奇のまなざしで僕を見るので、「トイラーグォイニャット」「シンチャオ」と挨拶して、笑顔をいただく。このくらいで受けてしまうのだから、楽でよい。

 部屋を出て、彼の自転車の後部にのり、それからベトナム軍の帽子を買ったり、ホーチミン博物館に行ったりした。ホーチミン廟の前で、ベトナム軍の帽子をつけたまま、記念写真をTuanにとってもらっていると、通る人通る人みんなが笑っていく。Tuanに聞いたら、外国人でこの帽子をかぶるやつはめったにいないかららしい。恥さらしだ。ホーチミン博物館を見学した後、その外で休んでいると、公安の兄ちゃんが僕の途中まで飲んでいたミネラルウォーターのボトルが欲しいとか彼にいったらしい。なんだかTuanが恐縮してしまっているので、あっけなく渡してあげる。公安はそれに水を自分で入れていた。が、最後までありがとうのあの字もなかった。ここでは公安って、とっても強いのね。みんな10代後半の顔をしているけど。

 みんな暑さに強い。僕はもうへたばってしまった。彼に自転車で送ってもらってホテルに戻る。明日はバッチャンに行くが、夕方またホテルで彼と落ち合い、音楽喫茶に行くことを約束した。途中で、最初に確認しておこうと明確にした一日のガイド料50,000VNDを渡す。そんなことはせんでくれよと言われたが、気持ちだ、と渡す。ありがとうと握手はあったものの、なんか防衛線を自分で張っているような、また親切を金で買っているようないやな気持ちも残る。が、まあよかろう。信用できる人間であった場合はそれで良し、信用できない人間であっても、その日の取引は終わったことにできる。あとで何を言われても、言い張れる。なんだか、僕もいやらしいなあ。

 しかし、蒸し暑い。暑さにやられて、頭が痛くなってきたので、冷水シャワーを浴びて、休むことにする。夜にQueen Cafeより何件かメールを送る。ここでマシンが空くのを待っている間、ちょっとだけ仲良くなったシクロドライバーはベトナム語しか話せない人だった。が、身振り手振りでサッカーのベトナム代表vs日本Jリーガーチームとの試合が悔しかった(4-3で日本Jリーグチームの勝ち)などという話をした。地べたに座っての会話はなかなかに楽しかった。「Anh yeu em」の言い方なども教わる。どんな意味かは秘密。

 さあて、明日のTuanとの約束は吉とでるか凶とでるか、楽しみだなあ。

<本日の支出>
    フォーガー        5,000VND
    ミネラルウォーター(小)    2,000VND
  郵便代(速達toサイゴン) 45,000VND
   絵はがき代(2セット)        100,000VND
    カフェ+たばこ                24,000VND
    国際電話                     56,000VND
    帽子                            20,000VND
    コカコーラ×2                2,000VND
    ホーチミン博物館            5,000VND
    胡志明故居                 3,000VND
    バインミー                    3,000VND
    Tuanガイド代                50,000VND
    Internet(25分)            13,000VND
 


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