ベトナム縦断日記
 

1999年7月6日−笑顔は世界の共通言語(ハノイ)



 
  今日のは長文注意です。いろんなことがあったので。

 さあ、起きた。気分もさわやかに日本出国だ。7:10宿を出る。朝はオーナーはいない。奥さんだけだ。この人はいい人だった。南海本線の通勤風景の中を、一人バックパックを背負って歩く。人々のちょっと痛い視線もなかなかに心地よいものがあるから不思議だ。A型肝炎の予防接種を受けようと思い。関空のCIQ棟に行ったのだが、γグロブリンはやっていないとのこと。つまり直前の予防接種になるものは、副作用時の対応がとれないため、行わない方針になったそうだ。伊丹空港のメディカルセンターはいつでもできますよ、なんていってたのに。とにかく、A型肝炎等のウィルスは熱に弱いので、熱したものだけを摂取するようにすれば、まずかからないと教わった。で、パンフレットを渡された。ほんとかなあ。まあ、そう心がけましょう。

  いざ、チェックインである。カウンターで聞いたところでは、なんでも10分早発で、10:05からの搭乗になるという。離陸予定がもともと11:30だったから、11:20になるのだろうか。早く出てしまうこともあることを初めて知った。 VN941便は、JALとベトナム航空の共同運行便である。搭乗員や機体が入れ替わりらしい。また搭乗員も共有も行うということである。搭乗待合コーナーでは、日本人よりもベトナム人が目立った。家族連れが多く、そこらをベトナムの子供が大勢走り回る。すでにベトナム気分。しかし、当然ながら何を言っているかは、さっぱりわからない。でも、なんかいいぞ。10:05からの搭乗という話もどこへやら、結局搭乗は11:00直前になった。いよいよ隣にベトナムの人が来たら、練習台になってもらおう!なんて思っていたら、30歳前後の日本人とおぼしき女性。だが、ベトナム人のスチュワードと話すのを聞いていると流暢なベトナム語。どっちか分からなくなってしまった。ままよ、と聞いてみたら日本人である。学生時代はベトナム語を専攻し、それからハノイに長く住んだことがあるということだった。いくつか参考情報を聞き、また調べた情報の確認などを行う。が、どうも、あまり構ってほしくないようなので、寝かせておいてあげることにした。そのころには、前席の子供が小さいボール玉をはじき飛ばす、おもちゃの拳銃でぱんぱん打ち始める。僕の席の下にも玉が飛んできたので、何度かとってあげているうちに、友達だと思われたのか、1時間ほどそのおもちゃでいっしょに遊ぶ羽目になった。何度もこちらの席の前後に玉をとばしては「とってー、とってー」とせがむ。いつまでやる気なんだろうなと思いつつ、相手をしていると、隣のお姉さんが「シーッ」と怒る。こちらまで怒られた気分である。そのうち、ベトナム人のお母さんが起きてくれたので、ようやく解放されたのを機に、重要な仕事である「スチュワーデスさんのアオザイ姿 激写!」活動に移行する。スチュワーデスさんの手間が空いたのを見計らい、「May I take your picture?」と聞くも、あっけなく「あたし日本人なんですけど、いいんでしょうかねえ」などと言われてしまう。写真の右側の人がそうで、JALとの共同運行便であるため、搭乗した乗務員ということであった。でも写るときは結構乗り気になってるんだよなあ。むしろ、ベトナム人のスチュワーデスさんの方が、よっぽどはにかみ屋さんである。他のスチュワーデスさんもそうであった。いずれにしろ、やっぱりアオザイはいいなあと実感。国内線も各社アオザイを制服にしないかなあ。・・・・・しないよな。

 と、アオザイに大騒ぎしているうちにタン・ソン・ニャット空港に到着。スコールに迎えられる。イミグレーションは特に問題ないし、読んでいたほど遅くもなかった。ただ、どこの国でもそうだが、非常に無愛想で、目も合わせようとしない。ここではトランジットでさらにハノイへの国内線に乗るため、しばし税関近くで待たされた。その間に空港職員のお姉さんに「Xin Chao(こんにちは)」と声をかけてみる。むこうも「Xin Chao」。おおお、ちゃんと通じるじゃないかあ。感動。ふと、横を見ると、空港職員のおっちゃんが何をするでもなく、ぶらぶらしながら、たばこを吸っている。見ているとすいたくなったので、「May I smoke here?」と聞いてみると「OK」。で、灰皿はどこなんだとジェスチャーで聞いた。すると・・・・おっちゃんは床を指す。灰皿なんてないのね。一緒にたばこを吸いつつ、調子に乗って、ここで写真撮影してもいいのかと聞くと、今度は「No」。外に出て撮すのは構わないとのことであったが。まあ、そうだろうなあと思う。だって、滑走路沿いの格納庫にハインド(攻撃ヘリ)が、しれっと置いてあるんだもんなあ。タン・ソン・ニャット空港は、軍事施設でもある。

 さて、荷物検査も中味までチェックされることもなく、国内線の待合室まで移動となる。ここでアオザイを着た店のお姉さんに、ここで写真をとってもいいかと聞いたところ、OKだったので、そのお姉さんにファインダーを向けたら、笑いながら逃げられてしまった。仕方ないので背中姿を撮って、ありがとうといったら、憎らしそうな笑顔を向けてきた。やっぱり基本的には、はにかみ屋さんなのかなあ。

 国内線に搭乗する時間となったので、搭乗カウンターを通っていくと、国際線の中で僕の後ろの座席にいた60代男性と20代女性の日本人が、何やら空港職員ともめている。「ん、何だ何だ」と近くまで行くと、女性の方から話してくれた。どうも国際線の中に忘れ物をしたらしい。確かに空港職員に相談して後で送ってもらうかするしかないだろう。「がんばってね」と声をかけるくらいしか、僕にはできない。でも「ありがとう」と言われたので、良しとする。国内線に乗り込み、隣にベトナム人がきたら、今度こそ発音を練習させてもらおうなんて思っていたら、となりに来たのは、さきほどの60代男性と20代女性の日本人であった。結局、荷物は見つからなかったらしい。それから2時間のフライト中、ずっと彼らとしゃべり通し(飛行機の揺れに恐怖して、僕が黙りこくってしまう時以外は)。60代男性は、これまではいつも船で中部(フエ、ダナン、ホイアン)に入り、3回ほど訪れたことがあるとのこと。サイゴンとハノイは今回初めてらしい。女性の方は、すべてが初めて。彼らと国内線で機内食が出るのかどうかを議論していると、女性のご期待通り出てきた。国際線でも食べたし、時間も5時くらいだからちょっと中途半端だとは思うが、夜おなかがすけば、また食べに出れば良い。機内食は「ミーホア」という料理らしく、きしめんのような麺に麻婆の汁がかかり、さらに甘辛いソースをたらして食べるというものだった。おいしいぞ。辛さもなかなか強いのだが、あとに残らない爽やかさ。さらにお話を続けていく。60代男性はカンボジアの対人地雷対策に結構な額の寄付をする団体と関わりがあるらしく、視察時には上を下にもおかない好待遇を受けたとのこと。移動中は警察のトラックやバイクに先導されながら移動していたらしい。東南アジアはいろいろ回ったが、タイとベトナム(中部)が好きということだった。20代女性の方からは、11月まで東京に住むことになったから、いつか東京で会うかもしれないね、などと仰っていただいたが、僕は東京だけは住まないからなあ。きっと会えないだろうな。そうこう話しているうちに、ハノイはノイバイ空港に着いた。バス/タクシーチケット売場で3$のミニバスチケットを買う。60代男性とメールアドレスの交換を行い、今日の国内線での写真を送ることを約束した。彼らに別れを告げ、いざハノイ市内へ!

 空港を出ると、すぐにタクシーの運ちゃんの大群がおそってきたが、ミニバスチケットを見せ、クリア。ミニバスのところまで行くと、「どこのホテルだ」と聞くので、「予約はまだしてないけど、Anh Sinh ホテルかな」とガイドブックで見ておいたホテルを言うと、「もうちょっと金をだせば、そこでおろしてあげるよ」と言う。で、「1$?」っと気になるお値段を確認すると、笑いながら「10$」。こちらも笑いながら「No,No,No」と断ると、そのままミニバスに乗せられる。結局、市内のベトナム航空事務所で降ろされることになるらしい。

 ミニバスの中に入り、となりのおじさんに「シン チャオ」。「トイ ラー グォイ ニャット」と日本人であることを告げると、英語で返事。マレーシアの人で仕事でハノイに来たということだった。出発前に、国際線で隣に乗っていた30前後の日本人女性も乗ってきた。挨拶などをしていると、ミニバスは出発し始める。このミニバスは「おらおら、どけどけ」と言わんばかりに、前に車がいるとパッシングとクラクションで無理矢理どかせてしまう。市内に入ると、中央分離線を越えて追い越しすることもあった。あたりは田園風景からだんだんと普通の街並みへと変わっていく。それと同時にあたりも暗くなっていく。もう夜8時前だもんなあ。うーん、ちょっと後悔。歩きで夜のホテル探しはやっぱりまずいかなあ。となりのマレーシア人に「It becomes dark and dark」と言うと「Yeah」と言いながら笑っていた。よほど自分が心細い顔をしていたものと見える。街並みでは、karaokeという看板を出す店やCafeやよくわからない店などが土間スタイルで並んでいる。マレーシア人としばし歓談していると、ベトナム航空の事務所前に着いて、バイクタクシーを雇えば、5000VNDでホテルまで連れて行ってくれるよと教えてくれた。僕が聞いている話では(サイゴンの話かもしれないけれども)夜のバイクタクシーは危険だということだと言うと、ハノイではそんなことはないと言う。面白そうだから、信じてみることにする。で、降りたところで、早速バイタクと交渉開始するも、5000VNDでは誰も相手にしてくれない。仕方ないので1$で手を打つ。バイタクの後部に乗る。ところがこの運ちゃん、途中で走行中に「ワンフン 10$」とか言い出す。げげっ、やっぱやばかったか!と気が動転し、「わしは1$しかはらわんぞ」と後部座席から叫ぶも、運ちゃんの言うことは変わらない。むむむむむ、まずは話を整理するため、バイクを停めてもらい、道ばたで話をする。「Anh Sinhホテルにわしは行きたい。で、その場合、1$しかはらわん。約束通りだ」と宣言すると、運ちゃんは、うんうんと頷きながらも「ワンフン 10$」と繰り返す。でも「1$しかはらわん」と再度宣言し、もう一度納得してもらった上で、先に進むこととした。着いたところは・・・・「Nam Phoung Hotel」。運ちゃんは顔もにこやかに、そのホテルを指さしながら「ワンフン(ナムフォン) 10$」と言う。やっと彼の言いたいことが分かった。運賃は1$だが、安いホテルへ連れて行くと言っていたのだった。疑ってすまんかったのう。と、わびの気持ちも入れ、チップ1$追加し2$支払う。人を疑うものではありませんのう、と自分に言い聞かせた。がよく考えると、僕の行きたいのはAnh Sinhホテルじゃないかあっ。むむ。まあ、でもとりあえず部屋を見てから考えよう。10$ってことだし。きっと運ちゃんにはキックバックがいくんだろうなあ。

 部屋を見せてもらう。うー、狭くて、さらにホットシャワーがないと来た。エアコンがあるが。ホットシャワーは基本でしょう。ということで、これは泊まれないかも、と話していると、もう一人に兄ちゃんがやおらやってきて強硬に泊まることを勧め始める。なんだかなあ、まずいなあ、この雰囲気。しかし、その雰囲気に飲まれるわけにもいかない。そもそも、僕は最初からAnh Sinhホテルだと言っているのだ。ここがどうしようもないと言っているわけではないが、まずAnh Sinhホテルの部屋をチェックして、そこが駄目ならこっちへ戻ってくるのでもいいだろう、いや戻ってくるからさあ、と宣言した。すると「あそこの部屋は大変悪い部屋だ。ここにしなよ。そうしてくれると俺はとってもハッピーなんだけど」と言う。・・・・あのなあ。で、こちらは「あんたがハッピーになるのは、重々理解する。よおくわかる。だが、わしは一回Anh Sinhホテルの部屋をチェックしないと、なんにも納得できんのよ」と切り返す。話はずっと平行線である。ここで、最初に部屋に連れてきてくれた受付の兄ちゃんがその様子を面白そうに見て、にやにやし始めた。僕も面白くなってきたので、大笑いした。すると全員大笑いになった。場の雰囲気は変わり、ようやく解放。んー、なんだか笑顔が重要なのだなあと感じ入った。笑いというのは場を和ませる。難しい解放交渉も笑いがあれば何とかなる。「笑顔は世界の共通言語なり」という格言が自分の中で生まれるのをおもむろに感じた。

 ロビーに降り、「意に沿えなくて、ごめんね」と握手で兄ちゃんらと別れる。と、さっきのバイタク運ちゃんがまだいた。彼のバイタクで「今度こそ、Anh Sinhホテルだぞ」と言い含める。うんうんなどと頷きながらも、やっぱり別のホテルに回って、いちいち勧めようとする。そんなにキックバックが欲しいのかなあ。そりゃ欲しいよな。でも駄目。「Anh Sinhホテルだよ」と、もうここから意地になり、一点張り攻撃。ようやく到着し、さらに1$を渡すころには、悲しそうな顔をしながら「スーベニア・・・・・」と消え入る声で言っている。今着いたばかりだから、土産はいらんよ、と返し、握手で別れる。はあ・・・ようやく着いた。つかれるぜ。

 Anh Sinhホテルの部屋は、広くて天井がやたら高く、ホットシャワー、バスタブ、ダブルベッドとシングルベッド、トイレットペーパー付きの洋式トイレと通りに面したベランダがついて、10$とお得なものだった。TVや電話はないけれども。ただし、エアコンを入れると、extraで1$。しめて11$/泊。エアコンはどうも必須のようだから、それで手を打ちましょう。OK。じゃあ、チェックインしましょうと、ロビーに降りたところで、なにやらもめている日本人が・・・・・。

 この人は20代の日本人男性だったが、明日日本に戻るため、ノイバイ空港までいくのだが、その足としてのタクシー手配を依頼しているということであった。それが9$と言われ、騙そうといてるんちゃうんかと息巻いていたのであった。それから延々となぜ騙そうとしていると思うのか、また以前にここに泊まろうとしたときに満室だと言われ、15$の他のホテルに回された、きっとそれもキックバックがあったに違いないなどという話を延々と聞かされることになってしまった。疲れているのにい。はやく眠りたいよお。しかし、彼は寝かせてくれなかった。それから1時間ほど、その疑いとベトナムでの過ごし方、とくにホアンキエム湖周辺の物売りの男はスリの一味だから買っちゃいけないとか(女の子はOKらしいが)、しまいには菅笠売りの女の子の二人から好かれて、三角関係で困っているとか、どうでも良い話まで聞かされることとなった。僕の結論としては、「そんなにうたがうんなら、他のホテルにも行って、タクシー手配の相見積もりをしてもらったら?」ということしかないので、それを言うも、さらに30分話しこまれてしまう。くたくただ。ようやく解放され、チェックインし、部屋に戻る。パスポートは預けなくても、出入国登録証を見せて、台帳に書き込まれるだけで済んだ。さっきの日本人は、パスポートを預かるのが当然で、なぜかというと、公安がチェックしにくるからだとかいってたけど。状況は刻々変わりつつあるのかもしれない。

 部屋にようやく入り、眠ろうとするも、お腹がすいてきた。ホテルの前のフォー屋さんで5000VNDのフォーガー(鶏肉入りうどん)を食す。おいしい。それからホテルに戻り、ホテルのお兄さんとベトナム語の発音をすこし教えてもらって、ミネラルウォーターを買った。で、ついでに日本円:VND=1:105のレートで6,000円ほど両替。部屋にもどり、洗濯し、風呂に入ってから、寝る。 

 次からは、もっとポイントを押さえた話にしよっと。長くなるから。

<本日の支出>
    宿からの電話代    \630
    南海本線            \470
    空港サービス使用料    \2,650
  空港税                20,000VND
    缶コーヒー            8,000VND
    ミニバスチケット    $3        ※タクシーの場合は、20$
   バイタク             $3
  フォー                5,000VND
    ミネラルウォーター 4,000VND
 


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